2011年4月29日金曜日

アルコール依存症の治療におけるcravingへの介入の重要性

Moderating effects of craving intervention on the relation between negative mood and heavy drinking following treatment for alcohol dependence.
Witkiewitz, K., Bowen, S., & Donovan, M. D. (2011),
Journal of Consulting and Clinical Psychology, 79, 54-63.

【目的】
①アルコール依存に対する16週間の行動的介入(CBI)のネガティブ気分と飲酒量の関連の検討。
②craving介入を受けることによって,ネガティブ気分と飲酒量の関連が抑制されるかどうか検討。
③抑制効果がcravingの変化(介入ではなく自記式質問紙の変化)によって媒介されているのかを検討。
④craving介入の効果が1年後のフォローアップまで維持されている化の検討。

【方法】
研究協力者:1381名が11の研究から集められた。COMBINE(Combined Pharmacotherapies and Behavioral Interventions for Alcohol Dependence)治療が16週間行われた。最終的に,CBI(behavioral intervention)を受け,cravingモジュールを受ける機会を得た治療に割り当てられた776名のデータを分析対象とた。
調査材料:①飲酒結果:がっつり飲んだ日(男性は5杯,女性は4杯以上)について,治療前30日と治
        療期間中の16週間(Timeline Followback)と治療後12ヶ月間の飲酒(the Form-90
interview,Miller & Del Boca, 1994)。
       ②短縮版POMS:ネガティブ気分。
       ③The Obsessive Compulsive Drinking Scale(Anton et al., 1996):飲酒関連思考,飲酒衝        動,思考を拒絶する能力。

【手続き】
CBIには,①クライエント変化のための動機づけを構築する動機づけ面接,②機能分析と治療プランの作成,③クライエントの状況とニーズによって個々に決まる(Assertion Skills Training, Communication Skill Training, Coping with craving and urge, Drink Refusal and Social Pressure Skill Training, Job Finding Training, Mood Management Training, Mutual Help Group Involvement, Social and Recreational Counseling, Social Support for Sobrietyから選択)。ちなみに,Coping with Craving and Urge(Bowen et al., 2010を参照)のモジュール(以下craving介入)を432名(半分以上)が受けた。

【結果】
記述統計量等に関して
craving介入を受けた人は,受けてない人と比較して治療後の治療期間中の飲酒量が少なく,ネガティブ気分も低かったが,cravingの評価に差異なし。ベースラインにおいてcravingを受けた人は,受けてない人と比較していくつかの変数において差異があったので,群間で比較をする際には共変量とした。

治療期間中のネガティブ気分と飲酒量の関連に関して
飲酒量の変化は,ネガティブ気分の潜在因子の増加によって予測(切片:B(SE)=0.20(0.09), p=.04,傾き:B(SE)=5.78(0.80), p<.001)。
→アルコール依存症においてネガティブな気分は,リスクとなる(よく言われていることではあるが…)。

群間におけるModeration analysis
moderation analysisの結果,アルコール摂取の予測に関して,ネガティブ気分×cravingモジュールを受けること(交互作用)が有意(B(SE)=-.5.93(1.61), p<.001)で大きな抑制効果(f2=0.92)。
治療を受けなかった人々は受けた人々よりネガティブ気分と飲酒の関連が強い。
→craving介入を受けることで,ネガティブ気分時に飲酒する可能性が低減。
また,dose-response effectから,回数を重ねるほど,関連が弱くなることが示された。
→craving介入を受けるほど,ネガティブ気分時に飲酒する可能性が低減。

治療期間中のcravingに関して
治療期間中のcravingの変化は,craving介入を受けたこと(B==-0.16),ネガティブ気分(B=1.08),ネガティブ気分×介入(B=-0.24)によって予測される。
→craving介入を受けると,cravingそのものも低減。
 ネガティブ気分が高いとcravingは高い。

群間の治療後のアウトカムに関して
治療期間中の自記式のcravingの変化は,治療後1年間のネガティブ気分と飲酒との間を媒介(B(SE)=-0.51(0.13), 95%Cl=-0.77~-0.25)。
→cravingの(主観的な)変化(質問紙)が,治療後1年間のネガティブ気分時の飲酒を低減させる。

群内の分析に関して
craving介入後のcravingの水準は,治療期間(95%Cl=0.28~0.98)およびフォローアップ期間(95%Cl=1.05~3.80)のネガティブ気分と飲酒の水準を媒介していた。
→craving介入後において,cravingの強さが強いとネガティブ気分時に飲酒を引き起こす可能性。その可能性は,治療期間中よりもフォローアップ期間に高い。

※cravingに対していかに取り組むのかがアルコール依存症治療においては重要。
また,776名のうち432名にcraving介入が用いられたことを考えると,cravingへの介入は多くの依存症患者に必須の治療構成要素だといえる。

※ここで行われているCoping with Craving and Urge(Bowen et al., 2010を参照)モジュールの中にはurge surfingと呼ばれるマインドフルネス技法が用いられている。

現在,リスク状況下でのcravingを測定する尺度(ギャンブルバージョンとアルコールバージョン)を作成している私にとって,自身の研究を後押しする研究の1つである。


2011年4月27日水曜日

攻撃性に対するマインドフルネスの影響

Could Mindfulness Decrease Anger, Hostility,and Aggression by Decreasing Rumination?
Borders, A ., Earleywine, A., & Jajodia, A. (2010).
Aggressive Behavior, 36, 28-44.

研究1:
【目的】
マインドフルネスは攻撃性の諸側面(敵意・怒り情動・言語的攻撃・身体的攻撃)に直接影響を与えるのか,反芻を下げることで攻撃性に影響を与えているのか。

【方法】
調査対象者
-大学生464名(平均年齢=19.7歳,うち2/3は女性)
調査材料
①MAAS:マインドフルネス("今・ここで"の体験への気づきと注意)
②RRQ:反芻
③AQ:身体的攻撃・言語的攻撃・敵意・怒り情動

【結果】

モデル①マインドフル→攻撃性 (χ2(289)=610.19, p<.001, RMSEA=.049, CFI=.91)
モデル②マインドフル→反芻→攻撃性 (χ 2(650)= 1388.559, p<.001, RMSEA=.049, CFI=.89)

→適合度的には大差なし

パス係数:マインドフルから反芻への直接パスと攻撃性へのパス有意
-マインドフルネス→反芻 (β=.-46, p<.001)
-マインドフルネス→身体的攻撃 (β=.-.14, p<.05)
-マインドフルネス→言語的攻撃 (β=-.22, p<.001)
-マインドフルネス→敵意 (β=-.38, p<.001)
-マインドフルネス→怒り情動 (β=-.37, p<.001)

反芻から攻撃性へのパスは敵意と怒り情動のみ有意
-反芻→敵意 (β=.48, p<.001)
-反芻→怒り情動 (β=.14, p<.05)

反芻をモデルに投入した場合,敵意のパス係数のみ大きく減少
-マインドフルネス→身体的攻撃 (β=.-.13, p<.05)
-マインドフルネス→言語的攻撃 (β=-.21 p<.01)
-マインドフルネス→敵意 (β=-.16, p<.01)
-マインドフルネス→怒り情動 (β=-.31, p<.001)

→反芻は,マインドフルネスと敵意の関係を部分媒介

敵意と怒りに対してのみ,反芻を介したマインドフルネスの間接効果有意
(敵意:β=-.22, 95%CI=-.91~-.38; 怒り情動:β=-.06, 95%CI=-.22~-.01)


研究2:対象者を一般成人に変えて調査

調査協力者
211名 (平均年齢=31.8, SD=118, うち60%が女性)

モデル①マインドフル→攻撃性 (χ2(289)=610.19, p<.001, RMSEA=.049, CFI=.91)
モデル②マインドフル→反芻→攻撃性 (χ 2(650)= 1388.559, p<.001, RMSEA=.049, CFI=.89)

【結果】

モデル①マインドフル→攻撃性 (χ2(288)=468.88, p<.001, RMSEA=.060, CFI=.89)
モデル②マインドフル→反芻→攻撃性 (χ 2(649)= 1047.85, p<.001, RMSEA=.058, CFI=.88)
→適合度的には大差なし

パス係数:マインドフルから反芻への直接パスと攻撃性へのパス有意
-マインドフルネス→反芻 (β=.-46, p<.001)
-マインドフルネス→身体的攻撃 (β=.-.21, p<.05)
-マインドフルネス→言語的攻撃 (β=-.24, p<.01)
-マインドフルネス→敵意 (β=-.41, p<.001)
-マインドフルネス→怒り情動 (β=-.23, p<.01)

反芻から攻撃性へのパスは身体的攻撃以外有意
-反芻→言語的攻撃 (β=.33, p<.01)
-反芻→敵意 (β=.54, p<.001)
-反芻→怒り情動 (β=.41, p<.05)

反芻をモデルに投入した場合,身体的攻撃以外のパス係数が大きく減少
-マインドフルネス→身体的攻撃 (β=.-.19, p=n.s.)
-マインドフルネス→言語的攻撃 (β=-.08 p=n.s.)
-マインドフルネス→敵意 (β=-.16, p=n.s.)
-マインドフルネス→怒り情動 (β=-.03, p=n.s.)

→反芻は,マインドフルネスと言語的攻撃・敵意・怒り情動の関係を部分媒介

身体的攻撃・敵意・怒りに対して,反芻を介したマインドフルネスの間接効果有意
(身体的攻撃:β=-.15, 95%CI=-.51~-.08; 敵意:β=-.25, 95%CI=-1.13~-.57; 怒り情動:β=-.19, 95%CI=-.67~-.11)


※概して,マインドフルネスは認知・情動的側面に影響があるが,攻撃行動への影響は弱い。攻撃行動へは,他の要因を介して間接的に影響を与えているかも?(情動制御など)



2011年4月26日火曜日

不確実さ不耐性が不安・抑うつ症状を強めるプロセス

Intolerance of uncertainty, worry, and rumination in major depressive disorder and generalized anxiety disorder.
Yook, K., Kim, K. H., Suh, S,Y., & Lee, K. S. (2010).
Journal of Anxiety Disorder, 24, 623-628.

【目的】
不確実さ不耐性と不安・抑うつ症状の関連を心配・反芻が媒介するか検討

【方法】
調査協力者
-GAD,MDDのいずれか,または両者の診断基準を満たす71名
(女性52名,男性19名,平均年齢=38.6歳,SD=11.1)
-他の精神疾患が主診断であるものは除外

調査材料
①HAM-A:不安症状
②HAM-D:抑うつ症状
③IUS:不確実さ不耐性
④PSWQ:心配
⑤RRS:反芻

【結果】
ブートストラップ法による媒介分析
●不安症状
→不確実さ不耐性の直接効果あり (β=.33, p<.01)
→心配が媒介した際の間接効果が有意
  (不確実さ不耐性→心配:β=.60, p<.01, 心配→不安症状:β=.26,p<.01)

●抑うつ症状
→不確実さ不耐性の直接効果なし
→反芻が媒介した際の間接効果が有意
  (不確実さ不耐性→反芻:β=.49,p<.01,反芻→抑うつ症状:β=.49,p<.01)

※不確実さ不耐性は心配を介して不安症状に影響を与え,反芻を介して抑うつ症状に影響を与えるというプロセスが示された。

不確実さ不耐性が直接ではなく間接的に抑うつ症状に影響をあたえているという点に納得。反芻は近年うつ病研究の中で,認知的回避という位置づけ。不確実さ不耐性はうつ病の他の回避にも影響を与えそうな予感。CBASを用いて不確実さ不耐性と抑うつ症状と回避行動の関連を見てみたい。
 

2011年4月21日木曜日

マインドフルネスとアルコール摂取との関連

Measuring mindfulness and examining its relationship with alcohol use and negative consequences.
Fernandez, C. A., Wood, D. M., Stein, R. A. L., & Rossi, S. J. 2010
Psychological of Addictive Behaviors, 24, 608-616.

【目的】
①Five Facet Mindfulness Questionnaire(FFMQ; Baer et al., 2006)の因子的妥当性の検討。②マインドフルネス,アルコール摂取,アルコールに関連する結果の関連をSEMを用いて検討。

【方法】
316名(女性177名,平均年齢22±0.41歳)の大学生が参加。参加者の95%が過去1年間に一回は飲酒。参加者はRCT研究(介入内容は,親への介入と動機づけ面接,詳細はWood et al., 2010)の46ヶ月後フォローアップに参加した者であった。

【測定指標】
①FFMQ:マインドフルネスを多側面(nonreactivity, act with awareness, describe, nonjudging, observe)から測定。
②Daily Drinking Questionnaire(DDQ; Collins et al., 1985):一般的な1週間の毎日の飲酒量を測定。
③Quantity-Frequency Questionnaire(Dimeff et al., 1999):過去1カ月における,最大飲酒量を測定。
④がっつり飲んだ日(男性5杯以上,女性4杯以上)
⑤Young Adult Alcohol Problems Screening Test(YAAPST; Hurlbut & Sher,1992):過去3ヶ月間におけるアルコールに関連する問題を測定。

【結果】
①確認的因子分析:因子間相関モデルでは、CFI=.94, RMSEA=.08であった。高次因子モデルでは,CFI=.92, RMSEA=.09であったが,‘Act with Awareness(r=-.26)’因子と‘Nonjudging(r=-.43)’因子がマインドフルネスと負の相関,他の3因子は正の相関を示した。
 →FFMQはマインドフルな人ほど,全ての因子で得点が高くなる。Baer et al.(2006)では瞑想経験者を対象としていたが,今回の参加者は瞑想経験が(比較的少)ない者であったことから,Baer et al.(2006)と同様の因子構造が得られなかった可能性。

②各変数間の関連
‘Describe(β=-.18, p<.05)’と‘Act with Awareness(β=-.17, p<.05)’がアルコール使用に影響。アルコール使用とアルコール関連問題の関係を統制後,‘Nonjudging(β=-.12, p<.05)’と‘Describe(β=.11, p<.05)’がアルコール関連問題に影響。
 →ここでは,マインドフルネスとアルコール関連問題に対する影響を検討しているが,なぜか…というのも測定しているアルコール関連問題は二日酔い,記憶喪失,学校をさぼるといったもので,マインドフルネスなスタイルをとることができるようになったことで,これらの問題が改善するかどうかは少し推測の域である。結果,‘Describe’に関して,アルコール使用には負の影響を与えているが,アルコール関連問題には正の影響を与えたりと,理論的な仮説が成り立たない結果となっている。
アルコール使用は潜在変数で測定指標の②~④が観測変数。

※アルコール使用とアルコール問題への‘Describe’因子の影響が異なることへの理解に苦しんでいます。何か理由があるのであれば教えていただきたいです。

EMDRとmindfulness.


EMDR and Mindfulness. Eye movements and attentional breathing tax working
memory and reduce vividness and emotionality of aversive ideation
van den Hout, Engelhard, Beetsma, Slofstra, Hornsveld, Houtveen, Leer
Journal of Behavior Therapy and Experimental Psychiatry(2011) in press(online)

【序論】
EMDRとMBCTの共通点は,
関連のない課題を遂行しながら,ネガティブな思考やイメージを想起すること。
つまり,eye movement(EV)やattentional brething(AB)が2重課題となってること。

【目的】
(1)ABはワーキングメモリ(WM)にどの程度負荷を与えるのか?
聴覚刺激へのReaction Time Test(RTT)を利用。
条件: RTT+AB vs RTT only

(2)ネガティブな記憶の想起がEMやABに付随したときに,
ネガティブな記憶に対する鮮明さや情動性は減少するのか?
条件:Recall only, Recall+AB and Recall+EM.

(3)EM・ABの負荷(RT slowing)が,EM ・ABの記憶想起の鮮明さと情動性を予測するか?

【実験Ⅰ】
high, lowトーンの聴覚刺激の弁別課題を行う。
RTT+AB, RTT+EM, RTT onlyの3条件を測定。
               ↓
嫌悪的記憶を3つ想起してもらい,鮮明さと情動性を評定。
               ↓            
Recall+AB, Recall+EM, Recall onlyの3条件で記憶想起
               ↓
       鮮明さ・情動性を評定 

【方法】
・参加者 大学生36名
・手続き EM…実験者が手を振る/AB…お腹に手を当てて,呼吸を観察。

【結果】
(1)分散分析の結果,
AB=EM>RTT でワーキングメモリの負荷が確認された。
(2)時期(pre vs. post) ×群(Recall, EM, AB) の分散分析
・鮮明さ EM>RTT
・情動性 AB=EM>RTT
(3)RT(条件RT - RTTonly)と 、鮮明さ・情動性(条件RT - Recallonly)の相関
EM, ABいずれも有意ではない。

【実験Ⅱ】
実験Ⅰの問題点を改善

・完全なカウンターバランス(疲労の効果を統制)
・刺激のインターバルを用いたシンプルRTT
・教示:正確さを求めず,早さのみに
・試行数の増加
・EMDRやMBCTを知ってる人を除外
・目を開けて,手をお腹に当てない(AB)
・MBCTの教示を最初に行う(AB)
・PC上のサークルを目で追うように(EM)

【結果】
(1)分散分析の結果,
AB=EM>RTT でワーキングメモリの負荷(RTとエラー)が確認された。
(2)鮮明さではAB=EM>RTT。情動性では交互作用なし。
(3)RT/エラーと 鮮明さの相関。
EMは負荷が大きいほど,鮮明さが低い(RT(r=-.29),エラー(r=-50))。

【考察】
EM(EMDR)のWM theoryは妥当。
ABでは,WM負荷を媒介しないかも。 
しかし,ABでもWMの負荷が見られたため,
WM theoryによって,MBCTを部分的に説明できる可能性もある。

※初投稿です。よろしくお願いします。
判断しない気づきや、ホームワーク、暴露的要素のウェイトなど
EMDRとmindfulnessには違いも多い。
mindfulnessでは、どんな刺激でも2重課題で触れることが、
判断しない気づきを促進するのか?


2011年4月20日水曜日

情動障害に対する診断横断的な治療の効果

Unified protocol for the transdiagnostic treatment of emotional disorder: Protcol development and initial outcome data.
Ellard, K. K., Fairholme, C. P., Boisseau, C. L., Farchione, T. J., & Barlow, D. H.
Cognitive and Behavioral Practice, 17, 88-101.

【目的】
気分障害・不安障害患者に対する診断横断的な治療プロトコル(UP)を開発し,効果を検証。

研究1

参加者=18名(平均年齢30歳, SD=0.64)
-不安障害・気分障害のいずれかの診断基準を満たす
-少なくとも3か月薬を変更していない者
-主診断:GAD:3名, SAD:4名, OCD:3名, PDA:4名, PTSD:1名, MDD:2名,心気症:1名
-併存疾患:GAD:4名,SAD:4名,OCD:2名, MDD:3名,dysthymia:2名,特定の恐怖症:1名,衝動制御障害:1名


測定指標
①ADIS-IV-L:不安障害・気分障害・身体表現性障害の機能障害,重症度
②BDI-II:抑うつ症状
③BAI:不安症状
④PANAS:快・不快情動性
⑤OCI-R:強迫症状
⑥PDSS-SR:パニック症状
⑦PSWQ:全般性不安症状
⑧SIAS:社交不安症状
⑨WSAS:職業・社会的機能障害

治療構造
個人セッション
1セッション=1時間 (最大15セッションまで)

①感情についての心理教育 (感情の機能的性質のレビューを含む)
②認知的な評価の誤りの変容
③情動回避の防止
④感情によって引き起こされる行動の変容

※恐れる外的,内的,身体的な手がかりに対するエクスポージャーが重要な要素

【結果】
治療前後での効果サイズ (η2p)
-ADIS (重症度評価):0.51
-BDI:0.29
-BAI:0.38
-不快情動性:0.36
-快情動性:0.17
-機能障害:0.36

→快情動性を除いて,治療前後の得点が有意に減少

症状別の効果サイズ (η2p)
-GAD:0.37
-SAD:0.55
-OCD:0.52
-PDA:0.75
-DEP:0.56

→治療前後の重症度得点が有意に減少したのはSADのみ (F (1, 7)=8.61, p<.05)

→効果が低~中なので,プロトコルの修正が必要

研究2

参加者=12名 (平均年齢=29.73歳,SD=7.11)
-不安・気分障害のいずれかの診断基準を満たす
-少なくとも3か月間薬を変更してないもの
-主診断のうちわけ:GAD:3名, SAD:5名, OCD:3名, PDA:2名, GAD+広場恐怖:1名,GAD+SAD:1名
-併存疾患のうちわけ:GAD:3名,SAD:3名,OCD:1名, PDA:2名,MDD:2名,dysthymia:1名,特定の恐怖症:2名,心気症:1名


測定指標
研究1に加えて,2つの構造化面接を追加
HAM-A(不安症状)
HAM-D(抑うつ症状)
強迫症状はOCIからYBOCSに変更

治療構造
1セッション60分(最高18回まで)

治療の変更点
1情動の適応的機能に対する理解と感情体験の観察スキル獲得の促進を強調
  感情のABCモデルの呈示(先行子→行動反応→反応の結果)
  怒り,悲しみ,不安を含む感情の適応的機能の定義を入念に教示
  不快感情によって引き起こされる行動例の補強

2情動に気づく訓練をセッションのはじめの方にやる(セッション6→セッション3)
 感情に対するマインドフルな注意の向け方(いまここで,非判断的)を強調
  感情増大エクササイズを追加

3認知的再評価は評価の柔軟性を強調
 情動体験前の認知だけじゃなく,情動体験中の認知にも取り組む
  いかに思考が感情,身体感覚,行動に与えているか強調

4内受容的エクスポージャーの際に,身体感覚の思考・行動への影響を強調

5獲得した感情制御スキルに関するブースターセッションをもうける


【結果】
治療前後での効果サイズ (η2p)
ADIS (重症度評価):0.70
HAM-A:0.28
HAM-D:0.44
BDI:0.12
BAI:0.42
不快情動性:0.45
快情動性:0.15
機能障害:0.36
→HAM-A,BDI, 快情動性を除いて,治療前後で有意に得点減少


診断別の治療前後での効果サイズ (η2p)
GAD:0.66
SAD:0.69
OCD:0.83
PDA:0.82
DEP:0.70

→抑うつを除いて,各不安症状は有意に減少

治療前からフォローアップでの効果サイズ (η2p)
ADIS (重症度評価):0.73
HAM-A:0.34
HAM-D:0.58
BDI:0.0.22
BAI:0.31
不快情動性:0.41
快情動性:0.06
機能障害:0.43

→BDI,BAI,快情動性を除いて,治療前からフォローアップにかけて有意に得点減少

治療反応者 (診断基準に満たない)の割合 
治療後
-全体:73%
-GAD:67%
-SAD:67%
-OCD:75%
-PDA:67%
-DEP:75%
-心気症:100%
-特定の恐怖症:50%

6ヶ月後のフォローアップ
-全体:85%
-GAD:80%
-SAD:88%
-OCD:100%
-PDA:75%
-DEP:100%
-心気症:100%
-特定の恐怖症:100%

→改訂版UPは,診断横断的に有効である可能性を示唆。今後,RCTで効果検証する必要あり。

→研究2で治療前後でのBDIの減少が有意でなかったのは,外れ値の影響による可能性 (一人だけ,抑うつ得点が治療後に以上に上がっていた←治療終了前後で一過性の強いストレス経験をした可能性あり。フォローアップでその人のBDIの得点は診断閾下まで下がってた)。

※各指標の分散分析のF値,p値は記述してませんので原本をあたって下さい。

※効果サイズを乗せた後の,「→~有意に減少した」というのは,各得点について,時期(治療前・後あるいは治療前・フォローアップ)を要因とする分散分析の結果です。






2011年4月19日火曜日

GADは強化学習が苦手

Stimulus-reinforcement-based decision making and anxiety: impairment in generalized anxiety disorder but not in generalized social phobia.
De Vido, J., Jones, M., Geraci, M., Hollon, N., Blair, R. J. R., Pine, S. D., & Blair, K.
Psychological Medicine (2009), 39, 1153-1161.

【目的】
全般性不安障害 (GAD)と全般性社交不安障害 (GSP)の違いを,報酬・罰の弁別学習の観点から検討

【方法】
実験協力者:
GAD患者群16名,GSP患者群20名,健常統制群19名 (年齢,性,知能はマッチング)
(平均年齢:GAD=41.6(2.75),GSP=35.3(2.45), 健常=34.1(2.52))

測定指標
BAI:不安症状
LSAS:社交不安症状
IDS:抑うつ症状
WAIS:IQ

実験課題:the differential reward/punishment learning task (DRPLT)
1.画面上に2枚の写真が呈示され,実験協力者はどちらかの絵を選択する。
2.事前にその写真に割り当てられているポイントがフィードバックされる。
3.1→2を繰り返し,多くの得点を獲得することが目標。

10枚の写真を使用(馬,コップ,フォークなど)
事前にランダムにポイントが割り当てられている
(実験協力者ごとにランダマイズすることで事前の刺激のvalenceを統制)
報酬→写真選択でポイント獲得
罰→写真選択でポイント損失

報酬/罰の呈示条件
罰・罰 (たとえば,-300・-100)
罰・報酬 (たとえば,-300・100)
報酬・報酬 (たとえば,300・100)

報酬/罰間の距離条件
近 (たとえば,100・300)
中 (たとえば,100・500)
遠 (たとえば,100・900)

指標は,課題の誤答数
罰罰条件では損失のより少ない写真を選択するのが正解
報酬報酬条件では報酬のより多い写真を選択するのが正解
罰報酬条件では,報酬写真を選択するのが正解

【結果】
誤答数について,群3 ×呈示条件 3×距離条件3の分散分析

-群の主効果有意 (F(2, 52=4.70), p < 0.025, η2p=0.15)
GAD群>GSP・統制群 (p<0.025, p<0.01)

-呈示条件の主効果有意 (F(2, 104=19.48), p < 0.001, η2p=0.27)
罰罰>報酬報酬>罰報酬 (p<0.01, p<0.05)

-距離条件の主効果あり (F(2, 104=43.00), p < 0.001, η2p=0.63)
近>中>遠 (p<0.001, p<0.001)

-交互作用なし

GADにGSPが合併している群とGSP群を比較
-群の主効果有意 (F(1, 27)= 5.29, p<0.05, n2p=0.16)
GADwithGSP>GSP

-交互作用なし

誤回答数を目的変数とする重回帰分析
-IQ, BAI, LSAS, IDSを説明変数とした場合,IQのみ有意に予測
(βの記載なし)
-IQと群を説明変数とした場合,両変数は有意に予測
(βの記載なし)
-GAD群の誤答数とIDSに(合計・条件別ともに)有意な相関関係なし

※報酬・罰刺激の処理がGADに特異的に弱い。心配は,報酬間・罰間の刺激強度の弁別を鈍らせる。刺激間の強度の弁別がうまくいかないから心配が全般化する?あるいは,心配という概念処理が環境からの強化・弱化刺激へのセンシティビティーを低下させる?後者だと,RoemerらのACTに基づくGADの概念化の指摘と一致する。


2011年4月17日日曜日

児童・青年期のGAD症状に対する感情のコントロール感の予測力

Relations Among Perceived Control Over Anxiety-Related Events, Worry, and Generalized Anxiety Disorder in a Sample of Adolescents.
Frala, J. L., & Leen-Feldner, E. W., Blumenthal, H., & Barreto, C. C. (2010)
Journal of Abnormal Child Psychology, 38, 237-247.

【目的】
青年期の過剰な心配に対する感情の統制不能感の予測を検討
年齢・性別・不快情動性を統制しても予測できるか

【方法】
調査協力者:140名の青年 (年齢幅=10-17,平均年齢=14.6,女性60名)

調査材料
①PANAS:不快情動性
②ACQ-C-S:感情のコントロール感
③PSWQ-C:過剰な心配
④RCADS:不安障害・気分障害

【結果】
階層的重回帰分析
過剰な心配 (PSWQ)に対する予測力
step1:年齢,性別,不快情動性 (ΔR2=.34, p<.01)
(年齢: β=.19, p<.01, 性別: β=.18, p<.05, 不快情動性: β=.48,p<.01)
step2:感情のコントロール感(ΔR2=.10, p<.01, β=.33, p<.01)

GAD症状 (心配+身体症状)に対する予測力
step1:年齢,性別,不快情動性 (ΔR2=.35, p<.01)
(年齢: β=.09, p=n.s., 性別: β=.07, p=n.s 不快情動性: β=.56,p<.01)
step2:感情のコントロール感(ΔR2=.06, p<.01, β=.26, p<.01)

GADの診断の有無に対する予測力
step1:年齢,性別,不快情動性
(年齢: 95%CI=0.06-0.88, オッズ比=0.24, p<.05,
性別: 95%CI=1.04-1.97, オッズ比=1.43, p<.05,
不快情動性: 95%CI=1.03-1.14, オッズ比=1.09, p<.01)
step2:感情のコントロール感
(95%CI=0.76-0.96, オッズ比=0.85, p<.01)

※児童・青年期においても,感情のコントロール感は過剰な心配に独自の影響を持つ。ただ,この研究では成人の研究のように,不確実さ不耐性やメタ認知の影響が統制されていない。メタ認知は児童でも心配に対して強い影響があるのか?(10歳くらいで発達しているもの?)。その点踏まえると,児童・青年期の過剰な心配に対してはコントロール感がターゲットとして有効であるかもしれない。

GAD症状に対する感情への恐怖・感情の統制不能感の予測力

Fear and perceived uncontrollability of emotion: Evaluating the unique
contribution of emotion appraisal variables to prediction of worry
and generalised anxiety disorder
Stapinski, L. A., Abbott, M. J., & Rapee, R. M. (2010)
Behaviour Research and Therapy, 48, 1097.

【目的】
感情への恐怖や感情の統制不能感が,不確実さ不耐性や心配に対するメタ認知の影響を統制した上で,GAD症状を予測するか検討。

【方法】
調査協力者
GADの診断基準を満たす123名 (GAD群(treatment seeking sample): 73.5%は他のI軸疾患を1つ以上併発)と健常成人76名 (統制群)の計199名 (平均年齢=36.6歳,SD=12.2)

調査材料
①PSWQ:過剰な心配(GAD症状:身体症状を含まない)
②PCCQ:将来の脅威に関する確率,コスト,コーピングの見積もり
③IUS:不確実さ不耐性
④MCQ:心配に対する肯定的信念・否定的信念
⑤ACS:感情に対する恐怖
⑥ACQ:感情のコントロール感
⑦DASS:抑うつ・不安・ストレス

【結果】
階層的重回帰分析で各群におけるACSとACQの増分妥当性を検討
GAD群
step1:DASSの抑うつ (ΔR2=.08, p<.01, β=.10, p=n.s.)
step2:PCQQ, MCQ, IUS (ΔR2=.26, p<.001)
(PCQQ: β=.26, p<.01, MCQ: β=.25, p<.05, IUS: β=.13,p=n.s.)
Step3:ACS, ACQ (ΔR2=.07, p<.01)
(ACS: β=.19, p=n.s, ACQ: β=.30, p<.01)

統制群
step1:DASSの抑うつ (ΔR2=.12, p<.01, β=.02, p=n.s.)
step2:PCQQ, MCQ, IUS (ΔR2=.35, p<.001)
(PCQQ: β=.32, p<.01, MCQ: β=.38, p<.01, IUS: β=.09,p=n.s.)
Step3:ACS, ACQ (ΔR2=.06, p<.05)
(ACS: β=.04, p=n.s, ACQ: β=.31, p<.01)

GAD群と統制群で同様の結果
- 感情のコントロール感は過剰な心配に独自の影響があるが感情への恐怖はなし
- step2ですでに不確実さ不耐性はメタ認知などを統制すると過剰な心配を予測せず

→感情のコントロール感は重要な介入要素となることを示唆




2011年4月14日木曜日

摂食障害と不確実さ不耐性

An Experimental Exploration of Behavioral and Cognitive-Emotional Aspects of Intolerance of Uncertainty in Eating Disorder Patients
Sternheim, L., Startup, H., & Schmidt, U. (in press)
Journal of Anxiety Disorder.

【目的】
摂食障害と不確実さ不耐性の関連を実験的指標 (the beads task)を用いて検討.

【方法】
実験協力者
神経性無食欲症 (AN群):37名,平均年齢=25.6 (8.5)
神経性大食症 (BN群):22名,平均年齢=26.1 (5.6)
健常成人(統制群):39名,平均年齢=27.5 (10.1)

【測定指標】
①EDE-Q:摂食障害症状
②DASS-21:不安・抑うつ・ストレス
③IUS:不確実さ不耐性
④the beads task: 不確実状況下の情報収集(決断に至るまでのビーズ引き回数)

※the beads taskの概要
-2つの瓶の中に,それぞれ2色(赤と緑)のビーズが入っている
-2色の比率が異なる(例えば,瓶①赤:緑=85:15,瓶②赤:緑=15:85)
-実験者が二つの瓶の片方からビーズを引く
-参加者は瓶を一つずつ見て,ビーズがどちらの瓶から引かれたのか推測
-参加者は,どちらの瓶からビーズが引かれているのか決めるために,30回までビーズを引くよう要求してよい

-課題の条件(不確実さの程度)
低条件(赤:緑,85:15-15:18)
中条件(赤:緑,60:40-40:60)
高条件(赤:緑:青,44:28:28-25:44:28)
表情刺激条件(笑顔:怒り:60:40-40:60)
※表情刺激条件は,ビーズを表情写真に変更したもの


【結果】
尺度得点:
EDE-Q・DASS得点:AN・BN群>統制群 (p<.001)
IUS得点AN群>BN群>統制群 (p<.001)

ビーズ引き要求の数:
-不確実さ中条件BN群>AN群・統制群
(U=289, p<.05, Rosenthal's r=.25 (弱~中程度の効果))
全条件を合わせても,BN群が最もビーズ引き要求多。
(U=.306 p<.01, r=.33)

-IUS得点は無相関

ビーズ課題への主観的評定
①どれくらい自分の決断に確信があるか:
不確実さが中と高の条件で,BN群>統制群
(中:U=201.00, p<.003, 高:U=233.00, p<.01)

②どれくらい苦痛を感じたか:
すべての条件で,AN群>統制群
(低:U=416.50, p<.05, 中:U=375.50, p<.01, 高:U=250.50, p<.001, 表情刺激条件:U=241.00, p<.001)
中条件を除いてBN群>統制群
(低:U=252.00, p<.05, 高:U=243.50, p<.01, 表情刺激条件:U=221.50, p<.05)

③自分の決断にどれくらい自信があるか:
中条件でAN群>BN群
(中:U=214.50, p<.05)
中・難条件で統制群>BN群
(中:U=187.00, p<.001,高:U=202.50, p<.01)

④自分にとって正解することはどれくらい重要か:
すべての条件で,AN群>統制群
(低:U=370.00, p<.01, 中:U=335.00, p<.001, 高:U=337.00, p<.001, 表情刺激条件:U=276.50, p<.001)
低条件を除くすべての条件で,AN群>BN群
(中:U=196.50, p<.05, 高:U=224.00, p<.05, 表情刺激条件:U=214.00, p<.05)

※自己評価式尺度だと,AN群が最も不確実さ不耐性高い (得点の高さはGADやOCD並み)。行動指標だBN群が高い(特に不確実さが中くらいの時)。BNは決断に自信がない,ANは正解するのが大事。IUSと行動指標に相関がない (情報収集=IUではない)。IUと情報収集行動独立した事象であり,両者の関連は,疾患ごとに異なる可能性がある。IUが高いGADで情報収集がみられるが,IUが高い統合失調症では,情報収集をせずに結論を出す(jumping to conclusion)。つまり,IUと情報収集行動の関係を他の要因が媒介している可能性あり。

2011年4月13日水曜日

GADの階層モデル:神経症傾向の影響をメタ認知と不確実さ不耐性が媒介する

A hierarchical model for the relationships between general and specific
vulnerability factors and symptom levels of generalized anxiety disorder.

van der Heiden et al. (2010). Journal of Anxiety Disorder, 24, 284-289.

【目的】
神経症傾向と外向性が心配に対する肯定的な認知・否定的な認知・不確実さ不耐性を介して,全般性不安症状および抑うつ症状に与えるというモデルの検討

【方法】
調査協力者
-GADが主診断の患者137名 (平均年齢=35歳,女性101名)
-半数以上が他のI軸疾患を併発
-MDD (21.8%),PanicDisorder (13.6%),SAD (10.2%),
SomatoformDisorder(8.8%),OCD (4.1%),
Specific Phobia (2.7%),Insomnia (2.7%)
-II軸疾患に関する情報はなし

調査材料
①NEO-FFI:神経症傾向・外向性
②IUS:不確実さ不耐性
③MCQ:心配に対する肯定的・否定的な認知
④PSWQ:過剰な心配(全般性不安症状)
⑤BDI-II:抑うつ症状

【結果】
bootstrapp法による媒介分析
①全般性不安症状への効果
-3変数(調査材料①~③)での心配の分散説明率39.8%で有意
 (F (5,115)=15.18, p<.0001)
-神経症傾向を統制すると,外向性から心配への直接効果,間接効果はなし
-外向性を統制すると,神経症から心配への直接効果はなく,間接効果が有意
 (b=.29, SE=.05, bootstrapped 95%信頼区間 =.13 ~.45)
-心配に対する否定的な認知と不確実さ不耐性の間接効果が有意
 (否定的認知:b=.20, SE=.05, bootstrapped 95% 信頼区間=.11 ~.31)
 (不確実さ不耐性:b=.10, SE=.05, bootstrapped 95%信頼区間 =.01 ~.21)

②抑うつ症状への効果
-3変数(調査材料①~③)での心配の分散説明率44.8%で有意
 (F (5,115)=21.92, p<.0001)
-外向性を統制すると,神経症から心配への直接効果 ,間接効果の双方が有意
 (直接効果:b=.39, SE=.16, t=2.43, p<.05)
 (間接効果b=.49, SE=.11, bootstrapped 95%信頼区間 =.25~.67)
-神経症傾向を統制すると,外向性から心配への直接効果は有意,間接効果はなし
 (b=-.26, SE=.13, t=-2.52, p<.05)
-心配に対する否定的な認知と不確実さ不耐性の間接効果が有意
 (否定的認知:b=.25, SE=.08, bootstrapped 95%信頼区間 =.14~.47)
 (不確実さ不耐性:b=.16, SE=.09, bootstrapped 95%信頼区間 =.00 ~.35)

まとめると,
経路1. 神経症傾向と外向性は直接抑うつ症状に影響を与える
経路2. 神経症傾向は心配に対する否定的認知・不確実さ不耐性を介して,
     全般性不安症状・抑うつ症状に影響を与える

※GADの不確実さ不耐性モデルには,心配に対する肯定的な認知は要因として含まれているが,否定的な認知は含まれていない。しかし不確実さ不耐性モデルに基づくCBT中では,肯定的な認知への介入で,否定的な認知に対するアプローチも含まれている。不確実さ不耐性モデルに基づくCBTの効果がGADに対し高い効果を示すのはそのためなんだろうか。