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2011年6月26日日曜日

メタ認知と注意

The relationship among metacognitions, attentional control, and state anxiety.
Spada, M. M., Georgius, G. A., & Wells, A. (2010).
Cognitive Behavior Therapy, 39, 64-71.

【目的】
質問紙調査で注意制御とメタ認知と状態不安の関連を検討

【方法】
参加者:143名の大学生(うち女性110名, 平均年齢=24.6±9.1)
調査材料:
① MCQ-30:メタ認知
(下位尺度:1.心配に対するポジティブな信念,2.心配に対するネガティブな信念, 3.認知的自身, 4.思考制御の必要性に関する信念, 5.認知的自己意識)
② ACQ:注意制御 (下位尺度:1.注意集中, 2. 注意切り替え, 3. 注意の柔軟性)
③STAI-S:状態不安

【結果】
相関分析 (順位相関係数):

心配に対するネガティブな信念 (rs=.65, p<.01),認知的自信 (rs=.37, p<.01),思考制御の必要性に関する信念 (rs=36, p<.01)は状態不安と正相関

注意集中は,心配に対するネガティブな信念 (rs=-.23, p<.01),思考制御の必要性に関する信念 (rs=-.20, p<.20),状態不安 (rs=.40, p<.01)と負相関
注意切り替えは,心配に対するネガティブな信念 (rs=-.32, p<.01),認知的自信(rs=-.32, p<.32),思考制御の必要性に関する信念(rs=-.24, p<.01),状態不安(rs=-.38, p<.01)と負相関。
注意の柔軟性は,メタ認知と状態不安ともに関連なし

階層的重回帰分析 (状態不安の予測):
相関分析で状態不安と相関があった3つのメタ認知をstep1,注意制御(集中と切り替え)をstep2に投入。step1の分散説明率有意(45.6%, p<.005), step2の分散説明率の増分有意 (p < .005)。注意集中(β=.51, p<.005)と心配に対するネガティブな信念 (β=-.22, p<.001)のみ状態不安を有意に予測。

※メタ認知はwellsのSREFモデルが発端で,その中で注意が重要な役割をしめているハズなのに,ようやく実証的な関連が検討されたよう。目的変数を心配にしたらどういう結果が出るだろう。


 

2011年4月17日日曜日

GAD症状に対する感情への恐怖・感情の統制不能感の予測力

Fear and perceived uncontrollability of emotion: Evaluating the unique
contribution of emotion appraisal variables to prediction of worry
and generalised anxiety disorder
Stapinski, L. A., Abbott, M. J., & Rapee, R. M. (2010)
Behaviour Research and Therapy, 48, 1097.

【目的】
感情への恐怖や感情の統制不能感が,不確実さ不耐性や心配に対するメタ認知の影響を統制した上で,GAD症状を予測するか検討。

【方法】
調査協力者
GADの診断基準を満たす123名 (GAD群(treatment seeking sample): 73.5%は他のI軸疾患を1つ以上併発)と健常成人76名 (統制群)の計199名 (平均年齢=36.6歳,SD=12.2)

調査材料
①PSWQ:過剰な心配(GAD症状:身体症状を含まない)
②PCCQ:将来の脅威に関する確率,コスト,コーピングの見積もり
③IUS:不確実さ不耐性
④MCQ:心配に対する肯定的信念・否定的信念
⑤ACS:感情に対する恐怖
⑥ACQ:感情のコントロール感
⑦DASS:抑うつ・不安・ストレス

【結果】
階層的重回帰分析で各群におけるACSとACQの増分妥当性を検討
GAD群
step1:DASSの抑うつ (ΔR2=.08, p<.01, β=.10, p=n.s.)
step2:PCQQ, MCQ, IUS (ΔR2=.26, p<.001)
(PCQQ: β=.26, p<.01, MCQ: β=.25, p<.05, IUS: β=.13,p=n.s.)
Step3:ACS, ACQ (ΔR2=.07, p<.01)
(ACS: β=.19, p=n.s, ACQ: β=.30, p<.01)

統制群
step1:DASSの抑うつ (ΔR2=.12, p<.01, β=.02, p=n.s.)
step2:PCQQ, MCQ, IUS (ΔR2=.35, p<.001)
(PCQQ: β=.32, p<.01, MCQ: β=.38, p<.01, IUS: β=.09,p=n.s.)
Step3:ACS, ACQ (ΔR2=.06, p<.05)
(ACS: β=.04, p=n.s, ACQ: β=.31, p<.01)

GAD群と統制群で同様の結果
- 感情のコントロール感は過剰な心配に独自の影響があるが感情への恐怖はなし
- step2ですでに不確実さ不耐性はメタ認知などを統制すると過剰な心配を予測せず

→感情のコントロール感は重要な介入要素となることを示唆




2011年4月13日水曜日

GADの階層モデル:神経症傾向の影響をメタ認知と不確実さ不耐性が媒介する

A hierarchical model for the relationships between general and specific
vulnerability factors and symptom levels of generalized anxiety disorder.

van der Heiden et al. (2010). Journal of Anxiety Disorder, 24, 284-289.

【目的】
神経症傾向と外向性が心配に対する肯定的な認知・否定的な認知・不確実さ不耐性を介して,全般性不安症状および抑うつ症状に与えるというモデルの検討

【方法】
調査協力者
-GADが主診断の患者137名 (平均年齢=35歳,女性101名)
-半数以上が他のI軸疾患を併発
-MDD (21.8%),PanicDisorder (13.6%),SAD (10.2%),
SomatoformDisorder(8.8%),OCD (4.1%),
Specific Phobia (2.7%),Insomnia (2.7%)
-II軸疾患に関する情報はなし

調査材料
①NEO-FFI:神経症傾向・外向性
②IUS:不確実さ不耐性
③MCQ:心配に対する肯定的・否定的な認知
④PSWQ:過剰な心配(全般性不安症状)
⑤BDI-II:抑うつ症状

【結果】
bootstrapp法による媒介分析
①全般性不安症状への効果
-3変数(調査材料①~③)での心配の分散説明率39.8%で有意
 (F (5,115)=15.18, p<.0001)
-神経症傾向を統制すると,外向性から心配への直接効果,間接効果はなし
-外向性を統制すると,神経症から心配への直接効果はなく,間接効果が有意
 (b=.29, SE=.05, bootstrapped 95%信頼区間 =.13 ~.45)
-心配に対する否定的な認知と不確実さ不耐性の間接効果が有意
 (否定的認知:b=.20, SE=.05, bootstrapped 95% 信頼区間=.11 ~.31)
 (不確実さ不耐性:b=.10, SE=.05, bootstrapped 95%信頼区間 =.01 ~.21)

②抑うつ症状への効果
-3変数(調査材料①~③)での心配の分散説明率44.8%で有意
 (F (5,115)=21.92, p<.0001)
-外向性を統制すると,神経症から心配への直接効果 ,間接効果の双方が有意
 (直接効果:b=.39, SE=.16, t=2.43, p<.05)
 (間接効果b=.49, SE=.11, bootstrapped 95%信頼区間 =.25~.67)
-神経症傾向を統制すると,外向性から心配への直接効果は有意,間接効果はなし
 (b=-.26, SE=.13, t=-2.52, p<.05)
-心配に対する否定的な認知と不確実さ不耐性の間接効果が有意
 (否定的認知:b=.25, SE=.08, bootstrapped 95%信頼区間 =.14~.47)
 (不確実さ不耐性:b=.16, SE=.09, bootstrapped 95%信頼区間 =.00 ~.35)

まとめると,
経路1. 神経症傾向と外向性は直接抑うつ症状に影響を与える
経路2. 神経症傾向は心配に対する否定的認知・不確実さ不耐性を介して,
     全般性不安症状・抑うつ症状に影響を与える

※GADの不確実さ不耐性モデルには,心配に対する肯定的な認知は要因として含まれているが,否定的な認知は含まれていない。しかし不確実さ不耐性モデルに基づくCBT中では,肯定的な認知への介入で,否定的な認知に対するアプローチも含まれている。不確実さ不耐性モデルに基づくCBTの効果がGADに対し高い効果を示すのはそのためなんだろうか。


2011年4月12日火曜日

統合失調症体験後のPTSD症状と再発への恐怖,不確実さ不耐性,メタ認知の関連

Postpsychotic Posttraumatic Stress Disorder: Associations With Fear of Recurrence and Intolerance of Uncertainty

White, Ross, Gumley, Andrew

Journal of Nervous & Mental Disease:

November 2009 - Volume 197 - Issue 11 - pp 841-849

【目的】
統合失調症の罹患すると,その症状の体験はトラウマ体験といえる程の脅威。
実際,統合失調症を経験に対しPTSD様症状が生じることがしばしば(Postpsychotic Postraumatic Stress Disorder: PP-PTSD)。
統合失調症の再発への恐怖,不確実さ不耐性,統合失調症状に対する評価 (メタ認知)という3つの認知変数がPP-PTSDと関連するか検討。

【方法】
①調査対象者:
統合失調症の経験に関する記憶に苦しみながら,就労している統合失調症の基準を満たす27名 (平均年齢:24~59歳, SD=10.33 )。
以下を満たすものは除外:
読み書き・返答ができない,陽性症状が極度に強い,学習障害,(統合失調症体験とは別のトラウマ体験によって)PTSDと診断されている,薬物依存,身体疾患,言語障害

②測定指標
CAPS-S:統合失調症患者のPTSD症状(PP-PTSD症状.再体験・回避・過覚醒)
PANSS:統合失調症の陽性・陰性症状
HADS:不安・抑うつ
FoRSe:再発への恐怖
IUS:不確実さ不耐性
IVI:幻聴に対する信念
BAPS-S:妄想に対するメタ認知的信念

【結果】
CAPSによって,PTSD有群 (10名)と無し群 (17名)に分類。
以下の指標において,PTSD有群は無し群に比べ有意に得点が高かった。
・PANNS合計得点 (d=-0.5)と陽性症状得点 (d=-0.5)
・不安 (d=-0.5),抑うつ得点 (d=-0.4)

・再発への恐怖 (d=-0.6)
・妄想に対するネガティブな信念 (d=-0.4)
・不確実さ不耐性(d=-0.4)

性別,年齢,入院回数,入院月数,退院からの月数,陽性症状,幻聴に対する信念に有意差なし。

有意差があった3つの認知変数のPP-PTSDに対する予測力を検討。
ロジスティック回帰分析の結果,再発への恐怖のみがPP-PTSDを予測 (β=0.20, SE=0.09, Wald統計量=5.46, オッズ比=1.213, p<0.05)。

PP-PTSDには,再発に対する恐れが関連する。不確実さ不耐性は,再発への恐怖などを統制するとPP-PTSDを予測しないが,再発への恐怖 (つまりは,再発したらどうしようという心配)を増大させ,PP-PTSD症状と関連する可能性があるかもしれない。

コメント:PP-PTSD症状ではなく,再発の予測因子として不確実さ不耐性は関与するかもしれない










  



2011年4月6日水曜日

Metacognitions in Desire Thinking

Metacognitions in Desire Thinking: A Preliminary Investigation.
Caselli, G., & Spada, M. M.
Behavioural and Cognitive Psychotherapy, 38, 629-637.

【目的】
信念が,依存症,摂食障害,衝動制御障害を抱える人々の欲望思考(desire thinking:DT)に影響する/抑制するメカニズムの検討。詳しくは,DTについてのメタ認知的信念の内容の特定,DTの目標の検討,DTの間の注意の焦点やDTが衝動に与える影響の検討。

【参加者】
アルコール依存,神経性大食症,病的賭博,煙草依存の診断をうけた24名(男性10名,女性14名)が参加。包括基準は,研究参加に同意した18歳以上の者で,イタリア語を理解でき,他の1軸or2軸診断を合併しておらず,過去にCBTを受けたことがない者。

【手続き】
全参加者は,約30分のthe metacognitive profiling interviewを行った(Wells, 2000)。面接では以下の5つの領域を引き出すよう行われた(DTの存在と内容,DTに関するメタ認知的信念,DTの目標,DT中の注意の焦点,DTが衝動に与える影響)。

【結果】
DTの2つのトリガー(ネガティブな情動,思考:14名,関連する外的なターゲット(刺激))が存在。
ポジティブなメタ認知的信念
→①ネガティブな思考や情動のコントロール
②興奮やモチヴェーションという形でのポジティブな感覚の増加
③行動に対するエグゼクティブ・コントロールの増加
④目標の達成の仕方を計画するのに役立つ
といった,DTの有用性に関係する信念。

ネガティブなメタ認知的信念
→①DTに従事することで引き起こされる行動に対するエグゼクティブ・コントロールを失う
②DTを制御することができない
③自己イメージに対するDTのネガティブな影響,認知的パフォーマンスに対するネガティブな影響

DTの目的
→①ネガティブな情動や思考の減少,②満足感やポジティブな感覚の達成。
しかし,DTの目的に関して,全参加者は,その目的が達成されたかどうかを知る方法を知らない。

注意の焦点
→(ネガティブな)情動状態と外的な文脈の間をシフトし続けている。

DTの衝動に与える影響→すべての参加者が増加すると回答。

【補足】
Desire Thinkingという言葉自体は比較的新しいかもしれないが,トリガー→「リスク状況」,ポジティブorネガティブなメタ認知的信念→「対象に対して抱く期待」といったように,既存の概念と似ている。