2011年4月14日木曜日

摂食障害と不確実さ不耐性

An Experimental Exploration of Behavioral and Cognitive-Emotional Aspects of Intolerance of Uncertainty in Eating Disorder Patients
Sternheim, L., Startup, H., & Schmidt, U. (in press)
Journal of Anxiety Disorder.

【目的】
摂食障害と不確実さ不耐性の関連を実験的指標 (the beads task)を用いて検討.

【方法】
実験協力者
神経性無食欲症 (AN群):37名,平均年齢=25.6 (8.5)
神経性大食症 (BN群):22名,平均年齢=26.1 (5.6)
健常成人(統制群):39名,平均年齢=27.5 (10.1)

【測定指標】
①EDE-Q:摂食障害症状
②DASS-21:不安・抑うつ・ストレス
③IUS:不確実さ不耐性
④the beads task: 不確実状況下の情報収集(決断に至るまでのビーズ引き回数)

※the beads taskの概要
-2つの瓶の中に,それぞれ2色(赤と緑)のビーズが入っている
-2色の比率が異なる(例えば,瓶①赤:緑=85:15,瓶②赤:緑=15:85)
-実験者が二つの瓶の片方からビーズを引く
-参加者は瓶を一つずつ見て,ビーズがどちらの瓶から引かれたのか推測
-参加者は,どちらの瓶からビーズが引かれているのか決めるために,30回までビーズを引くよう要求してよい

-課題の条件(不確実さの程度)
低条件(赤:緑,85:15-15:18)
中条件(赤:緑,60:40-40:60)
高条件(赤:緑:青,44:28:28-25:44:28)
表情刺激条件(笑顔:怒り:60:40-40:60)
※表情刺激条件は,ビーズを表情写真に変更したもの


【結果】
尺度得点:
EDE-Q・DASS得点:AN・BN群>統制群 (p<.001)
IUS得点AN群>BN群>統制群 (p<.001)

ビーズ引き要求の数:
-不確実さ中条件BN群>AN群・統制群
(U=289, p<.05, Rosenthal's r=.25 (弱~中程度の効果))
全条件を合わせても,BN群が最もビーズ引き要求多。
(U=.306 p<.01, r=.33)

-IUS得点は無相関

ビーズ課題への主観的評定
①どれくらい自分の決断に確信があるか:
不確実さが中と高の条件で,BN群>統制群
(中:U=201.00, p<.003, 高:U=233.00, p<.01)

②どれくらい苦痛を感じたか:
すべての条件で,AN群>統制群
(低:U=416.50, p<.05, 中:U=375.50, p<.01, 高:U=250.50, p<.001, 表情刺激条件:U=241.00, p<.001)
中条件を除いてBN群>統制群
(低:U=252.00, p<.05, 高:U=243.50, p<.01, 表情刺激条件:U=221.50, p<.05)

③自分の決断にどれくらい自信があるか:
中条件でAN群>BN群
(中:U=214.50, p<.05)
中・難条件で統制群>BN群
(中:U=187.00, p<.001,高:U=202.50, p<.01)

④自分にとって正解することはどれくらい重要か:
すべての条件で,AN群>統制群
(低:U=370.00, p<.01, 中:U=335.00, p<.001, 高:U=337.00, p<.001, 表情刺激条件:U=276.50, p<.001)
低条件を除くすべての条件で,AN群>BN群
(中:U=196.50, p<.05, 高:U=224.00, p<.05, 表情刺激条件:U=214.00, p<.05)

※自己評価式尺度だと,AN群が最も不確実さ不耐性高い (得点の高さはGADやOCD並み)。行動指標だBN群が高い(特に不確実さが中くらいの時)。BNは決断に自信がない,ANは正解するのが大事。IUSと行動指標に相関がない (情報収集=IUではない)。IUと情報収集行動独立した事象であり,両者の関連は,疾患ごとに異なる可能性がある。IUが高いGADで情報収集がみられるが,IUが高い統合失調症では,情報収集をせずに結論を出す(jumping to conclusion)。つまり,IUと情報収集行動の関係を他の要因が媒介している可能性あり。

2 件のコメント:

  1. IUと行動指標に関連が無いということですが,摂食障害における情報収集の機能について触れたいと思います。例えばGADの場合だと,情報収集といった行動が心配の除去・低減といった機能を持つと思われますが,摂食障害ではどうか…すなわち摂食障害患者における不確実な状況での心配・不安の除去を反映した課題だと関連がみられるのではと思いますがどうでしょうか?あまり専門ではないので見当違いの場合は申し訳ない。

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  2. わたしも摂食障害は専門ではないので,そもそもIUが摂食障害の中でどのような位置づけで関連が指摘されているのか定かではありません。可能性としては,情報収集行動が不確実な状況での心配・不安を低減する主方略ではなく,他の行動がメインであることも考えられます。確かに,よこさんが指摘されるように,摂食障害と関連の強い不確実な状況というのもあるのかもしれません。

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