Ellard, K. K., Fairholme, C. P., Boisseau, C. L., Farchione, T. J., & Barlow, D. H.
Cognitive and Behavioral Practice, 17, 88-101.
【目的】
気分障害・不安障害患者に対する診断横断的な治療プロトコル(UP)を開発し,効果を検証。
研究1
参加者=18名(平均年齢30歳, SD=0.64)
-不安障害・気分障害のいずれかの診断基準を満たす
-少なくとも3か月薬を変更していない者
-主診断:GAD:3名, SAD:4名, OCD:3名, PDA:4名, PTSD:1名, MDD:2名,心気症:1名
-併存疾患:GAD:4名,SAD:4名,OCD:2名, MDD:3名,dysthymia:2名,特定の恐怖症:1名,衝動制御障害:1名
測定指標
①ADIS-IV-L:不安障害・気分障害・身体表現性障害の機能障害,重症度
②BDI-II:抑うつ症状
③BAI:不安症状
④PANAS:快・不快情動性
⑤OCI-R:強迫症状
⑥PDSS-SR:パニック症状
⑦PSWQ:全般性不安症状
⑧SIAS:社交不安症状
⑨WSAS:職業・社会的機能障害
治療構造
個人セッション
1セッション=1時間 (最大15セッションまで)
①感情についての心理教育 (感情の機能的性質のレビューを含む)
②認知的な評価の誤りの変容
③情動回避の防止
④感情によって引き起こされる行動の変容
※恐れる外的,内的,身体的な手がかりに対するエクスポージャーが重要な要素
【結果】
治療前後での効果サイズ (η2p)
-ADIS (重症度評価):0.51
-BDI:0.29
-BAI:0.38
-不快情動性:0.36
-快情動性:0.17
-機能障害:0.36
→快情動性を除いて,治療前後の得点が有意に減少
症状別の効果サイズ (η2p)
-GAD:0.37
-SAD:0.55
-OCD:0.52
-PDA:0.75
-DEP:0.56
→治療前後の重症度得点が有意に減少したのはSADのみ (F (1, 7)=8.61, p<.05)
→効果が低~中なので,プロトコルの修正が必要
研究2
参加者=12名 (平均年齢=29.73歳,SD=7.11)
-不安・気分障害のいずれかの診断基準を満たす
-少なくとも3か月間薬を変更してないもの
-主診断のうちわけ:GAD:3名, SAD:5名, OCD:3名, PDA:2名, GAD+広場恐怖:1名,GAD+SAD:1名
-併存疾患のうちわけ:GAD:3名,SAD:3名,OCD:1名, PDA:2名,MDD:2名,dysthymia:1名,特定の恐怖症:2名,心気症:1名
測定指標
研究1に加えて,2つの構造化面接を追加
HAM-A(不安症状)
HAM-D(抑うつ症状)
強迫症状はOCIからYBOCSに変更
治療構造
1セッション60分(最高18回まで)
治療の変更点
1情動の適応的機能に対する理解と感情体験の観察スキル獲得の促進を強調
感情のABCモデルの呈示(先行子→行動反応→反応の結果)
怒り,悲しみ,不安を含む感情の適応的機能の定義を入念に教示
不快感情によって引き起こされる行動例の補強
2情動に気づく訓練をセッションのはじめの方にやる(セッション6→セッション3)
感情に対するマインドフルな注意の向け方(いまここで,非判断的)を強調
感情増大エクササイズを追加
3認知的再評価は評価の柔軟性を強調
情動体験前の認知だけじゃなく,情動体験中の認知にも取り組む
いかに思考が感情,身体感覚,行動に与えているか強調
4内受容的エクスポージャーの際に,身体感覚の思考・行動への影響を強調
5獲得した感情制御スキルに関するブースターセッションをもうける
【結果】
治療前後での効果サイズ (η2p)
ADIS (重症度評価):0.70
HAM-A:0.28
HAM-D:0.44
BDI:0.12
BAI:0.42
不快情動性:0.45
快情動性:0.15
機能障害:0.36
→HAM-A,BDI, 快情動性を除いて,治療前後で有意に得点減少
診断別の治療前後での効果サイズ (η2p)
GAD:0.66
SAD:0.69
OCD:0.83
PDA:0.82
DEP:0.70
→抑うつを除いて,各不安症状は有意に減少
治療前からフォローアップでの効果サイズ (η2p)
ADIS (重症度評価):0.73
HAM-A:0.34
HAM-D:0.58
BDI:0.0.22
BAI:0.31
不快情動性:0.41
快情動性:0.06
機能障害:0.43
→BDI,BAI,快情動性を除いて,治療前からフォローアップにかけて有意に得点減少
治療反応者 (診断基準に満たない)の割合
治療後
-全体:73%
-GAD:67%
-SAD:67%
-OCD:75%
-PDA:67%
-DEP:75%
-心気症:100%
-特定の恐怖症:50%
6ヶ月後のフォローアップ
-全体:85%
-GAD:80%
-SAD:88%
-OCD:100%
-PDA:75%
-DEP:100%
-心気症:100%
-特定の恐怖症:100%
→改訂版UPは,診断横断的に有効である可能性を示唆。今後,RCTで効果検証する必要あり。
→研究2で治療前後でのBDIの減少が有意でなかったのは,外れ値の影響による可能性 (一人だけ,抑うつ得点が治療後に以上に上がっていた←治療終了前後で一過性の強いストレス経験をした可能性あり。フォローアップでその人のBDIの得点は診断閾下まで下がってた)。
※各指標の分散分析のF値,p値は記述してませんので原本をあたって下さい。
※効果サイズを乗せた後の,「→~有意に減少した」というのは,各得点について,時期(治療前・後あるいは治療前・フォローアップ)を要因とする分散分析の結果です。
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