2011年4月19日火曜日

GADは強化学習が苦手

Stimulus-reinforcement-based decision making and anxiety: impairment in generalized anxiety disorder but not in generalized social phobia.
De Vido, J., Jones, M., Geraci, M., Hollon, N., Blair, R. J. R., Pine, S. D., & Blair, K.
Psychological Medicine (2009), 39, 1153-1161.

【目的】
全般性不安障害 (GAD)と全般性社交不安障害 (GSP)の違いを,報酬・罰の弁別学習の観点から検討

【方法】
実験協力者:
GAD患者群16名,GSP患者群20名,健常統制群19名 (年齢,性,知能はマッチング)
(平均年齢:GAD=41.6(2.75),GSP=35.3(2.45), 健常=34.1(2.52))

測定指標
BAI:不安症状
LSAS:社交不安症状
IDS:抑うつ症状
WAIS:IQ

実験課題:the differential reward/punishment learning task (DRPLT)
1.画面上に2枚の写真が呈示され,実験協力者はどちらかの絵を選択する。
2.事前にその写真に割り当てられているポイントがフィードバックされる。
3.1→2を繰り返し,多くの得点を獲得することが目標。

10枚の写真を使用(馬,コップ,フォークなど)
事前にランダムにポイントが割り当てられている
(実験協力者ごとにランダマイズすることで事前の刺激のvalenceを統制)
報酬→写真選択でポイント獲得
罰→写真選択でポイント損失

報酬/罰の呈示条件
罰・罰 (たとえば,-300・-100)
罰・報酬 (たとえば,-300・100)
報酬・報酬 (たとえば,300・100)

報酬/罰間の距離条件
近 (たとえば,100・300)
中 (たとえば,100・500)
遠 (たとえば,100・900)

指標は,課題の誤答数
罰罰条件では損失のより少ない写真を選択するのが正解
報酬報酬条件では報酬のより多い写真を選択するのが正解
罰報酬条件では,報酬写真を選択するのが正解

【結果】
誤答数について,群3 ×呈示条件 3×距離条件3の分散分析

-群の主効果有意 (F(2, 52=4.70), p < 0.025, η2p=0.15)
GAD群>GSP・統制群 (p<0.025, p<0.01)

-呈示条件の主効果有意 (F(2, 104=19.48), p < 0.001, η2p=0.27)
罰罰>報酬報酬>罰報酬 (p<0.01, p<0.05)

-距離条件の主効果あり (F(2, 104=43.00), p < 0.001, η2p=0.63)
近>中>遠 (p<0.001, p<0.001)

-交互作用なし

GADにGSPが合併している群とGSP群を比較
-群の主効果有意 (F(1, 27)= 5.29, p<0.05, n2p=0.16)
GADwithGSP>GSP

-交互作用なし

誤回答数を目的変数とする重回帰分析
-IQ, BAI, LSAS, IDSを説明変数とした場合,IQのみ有意に予測
(βの記載なし)
-IQと群を説明変数とした場合,両変数は有意に予測
(βの記載なし)
-GAD群の誤答数とIDSに(合計・条件別ともに)有意な相関関係なし

※報酬・罰刺激の処理がGADに特異的に弱い。心配は,報酬間・罰間の刺激強度の弁別を鈍らせる。刺激間の強度の弁別がうまくいかないから心配が全般化する?あるいは,心配という概念処理が環境からの強化・弱化刺激へのセンシティビティーを低下させる?後者だと,RoemerらのACTに基づくGADの概念化の指摘と一致する。


2 件のコメント:

  1. GAD群とGSP群では(一般的に)心配の得点は決定的に異なるのでしょうか?ここではBAIとLSASで測定していますが,GADの症状を測定する指標としては適切な指標なのでしょうか?適当な指標であるのならば,強化・弱化へのセンシティビティーの話までは持っていけるとは思いますが…

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  2. PSWQで測定する心配だと,やはりGADが高いです。
    確かに,今回の研究でGAD症状の測定として,BAIは不適だと思います。結果をみても,BAIでエラー数を予測できていないですし。ただ,群がエラー数を予測しているので,GAD症状とセンシティビティーには関連があると考えられます。ただ,心配に特化して測定したものとの関連は見ていないので,心配とセンシティビティーとの関連については確かに言えないですね(GADの診断の中には身体反応も含まれているので)。ご指摘ありがとうございます。

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