【目的】
全般性不安障害(GAD)は,他の不安障害や薬物依存より生活の質が低い。ACTの発想に基づくGADに対する行動療法では,体験の回避を病理の中核に据えており,心配によって価値に基づく行動の遂行(コミットメント)が阻害されていることを想定している。GADとコミットメントの関連について調査.
【方法】
対象者
GAD患者50名,健常成人41名
(両群の年齢,性別,人種の割合はマッチング)
測定指標
①PSWQ(心配の過剰さ)
②ACS(感情への恐れ)
③AAQ(体験の回避)
④VLQ(コミットメント)
⑤QOLI(生活の質)
【結果】
GADとVLQ
>GAD群は健常成人群よりVLQが低い (F(1, 56)=12.32, p=.001, η2p =.18)
>ちなみに,GAD群では,女性より男性の方がVLQ低い
VLQと他の指標の関連(GAD群)
>VLQはQOLI(r=.65),AAQ(-.46), ACS(-.41)と有意な相関
>性別を統制するとVLQとACSの関連は消失
>VLQとPSWQは有意な関連なし
VLQのQOLIに対する予測力(GAD群)
>性別(β=.36),GADの重症度(β=-.30),ACS(β=n.s.),AAQ(β=-.35)を統制しても,
VLQはQOLIを有意に予測(β=.28)
ACTに基づく行動療法によるVLQの変化
>GAD群の行動療法終了後のVLQは開始前のVLQより有意に高い。
が,その効果はあまり高くない(F(1, 56)=4.55,p=.04, η2p=.07)
>Jacobsonの公式でVLQのカットオフ値を算出(57.26)
行動療法終了後にVLQのカットオフ値を上回った のは40%.
>少なくとも行動療法終了直後では,ACTに基づく行動療法は
VLQの改善に対し高い効果があるとは言えない.
※価値に関するちゃんとした量的研究は貴重。
※VLQがGAD群で低いのに,PSWQと相関がないのが興味深い.
やはり,症状と価値やウェルビーンなどポジティブ系は別軸.なのか.
※介入によってコミットメントの改善が十分示されなかったのは,
研究のデザインの問題かもしれないが,
ACTに基づく行動療法がコミットメント改善に最適ではない可能性もあり.
(ここでやってる行動療法とACT本体に若干のずれがあるのは否めないが.)
測定指標でVLQ=コミットメントと記述されていますが,考察では価値を測定しているというようにも見えます。確かに,価値とコミットメントを明確に区別することが難しいor臨床的には区別する必要もないのかもしれませんが,VLQがこの研究では何を測定しているのかを教えていただけると幸いです。
返信削除コメントいただきありがとうございます。
返信削除VLQは,①どの領域がどれだけ自分の人生で重要か②重要だと思う領域で価値と一致した生活を送れているか,という二つの側面を測定するのですが,分析では①と②を合算した値を用いています。なので,価値とコミットメントの両者が含まれたものと考えられます。考察部分で価値を測定しているように記述されたりコミットメントが記述されているように書かれているのもそのためかもしれません。