2011年12月26日月曜日

双極性障害患者に対するマインドフルネス認知療法

さて…,話題沸騰中の双極性障害関連を一つ。
双極性障害でなければ,軽く素通りするところかもしれませんが,是非。


CNS Neuroscience & Therapeutics, 00, 1-9, 2011
Mindfulness-based cognitive therapy for nonremitted patients with bipolar disorder
Deckersbach, T., Holzel, K. B., Eisner, R. L., Stange, P. J., Peckham, D. A., Dougherty, D. D., Rauch, L. S., Lazar, S., & Nierenberg, A. A.


【目 的】
MBCTが双極性障害患者の気分症状や認知的変数の減少に効果的かどうかを検討。


【方 法】
双極性Ⅰ型(9名:男性2名)orⅡ型(3名:男性1名)障害の診断基準(by M.I.N.I.)を満たす12名が参加。
包括基準
(1)研究開始前の1ヶ月間で少なくとも3日/Wの残遺抑うつ症状があり,
(2)全くor少ない残遺躁症状(YMRS<12)で,
(3)スクリーニング前の1ヶ月間にDSM-IVの大うつ病エピソードor軽躁病and躁病エピソードがなく,
(4)継続した投薬を行なっている。
除外基準
(1)自殺念慮,
(2)DSM-IVで統合失調症,統合失調性感情障害,妄想性障害,精神病性障害,特定不能の大うつ病性障害,
(3)少なくとも12ヶ月以内のアルコールを含む物質依存障害,
(4)未治療の甲状腺機能低下,
(5)参加前6ヶ月以内に電気痙攣療法を受けている,
(6)過去4週間の器質性精神障害や治療参加に影響するほどの神経学的・医学的疾患。


最終的に2名がドロップアウトしたので,10名(男性2名,平均年齢=38.7±9.5歳)が分析対象。
9名が何かしらの薬物療法を行なっている。
4名がGAD,2名がPD,2名がOCD,1名がPTSDを併存。
2名がアルコール依存,1名がアルコール依存とアンフェタミン依存の既往歴。


【測定指標】
FFMQ
HAM-D
YMRS(Young Mania Rating Scale):残遺躁症状の重症度
PSWQ
RSQ(Response Style Questionnaire):抑うつ症状に対する反応スタイル(反芻,気ぞらし,問題解決)
ERS(Emotional Reactivity Scale):情動感受性,強さ,持続性
ASRS(Adult ADHD Self-Report Scale)
CPAS(Clinical Positive Affective Scale):個人が経験するポジティブ感情
PWBS
LIFE-RIFT(Longitudinal Interval Follow-up Evaluation-Range of Impaired Functioning Tool):心理社会的な機能


【手続き】※この論文はここが重要だと自分は考えています。
MBCTは,3ヶ月間毎週120分の集団療法で実施。


CBTの治療構成要素として,気分のモニタリング,問題解決,bipolarについての心理教育,気分症状のマネジメントのためのemergency planが含まれた。問題解決は,デイリーハッスルや生活での障害物への対処を学ぶために実施(これがないと,HWでのマインドフルネスなどの実施が困難になり,治療のドロップアウトを引き起こしかねないためとのこと)。


マインドフルネスには,ボディスキャン,坐瞑想,ルーチンで行われるマインドフルネス,loving kindness瞑想,gentle yogaが含まれた。


S1-12:毎日の変動する気分のモニタリング
S2-3:気分状態の悪化のサインの特定や悪化していく気分状態に対するemergency planの作成(できるだけ気分状態の変動を減らすための刺激統制や行動計画or気分状態の悪化の引き金と関連する感覚,思考,感情へのマインドフルネス)
S3-7:抑うつ,反芻,不安,焦燥,イライラの悪循環についての心理教育をグループで受けディスカッション
S4-12:感情についての心理教育に伴い,それぞれの感情や思考に対するマインドフルネス
S1-4:フォーマルなマインドフルネスエクササイズが実施(ボディスキャンとか坐瞑想とか)+HW,日常生活でのマインドフルネスエクササイズ促進のために携帯のアラームでお知らせなどが用いられた。
S7-12:自己に対する思いやり(self-compassion),満足できる活動,上記の活動に対するマインドフルネスに焦点を当てて行われた。
S7-12:思いやりのあるセルフコーチングが導入(S7)←loving kindness瞑想で取り入れられた。また,日常生活における自己鎮静(self-soothing)活動やその活動に対するマインドフルネス。
S12:再発予防についての心理教育と学習したスキルの復習。


【結 果】※ここは,ある程度想定の範囲内の変化。
参加者の特徴:双極性障害のはじまりは,21.9±12.2歳。


治療効果:平均セッション参加数は,8.5±1.6回。


マインドフルネス:ANOVA(ITT解析)の結果から,Observe, Nonjudge, Nonreactは治療前後で有意に得点が上昇し,3ヵ月後のフォローアップで得点の有意な増加は認められなかった。


抑うつ症状と躁症状:残遺抑うつ症状は治療後に減少し,フォローアップ時に有意な増加は認められなかったが,躁症状は治療前後,フォローアップ時に有意な変化は認められなかった。


反芻や心配:治療前後で,反芻思考と心配は減少し,フォローアップ時に有意な増加は認められなかった。


情動制御:治療前後で有意な得点の増加が認められた。


注意:ASRSの注意困難において,治療前後で得点に有意な減少が認めれ,フォローアップ時には有意な変化は認められなかった。


PWBS,ポジティブ感情,心理社会的機能:すべて治療前後で期待される方向に変化し,フォローアップでは有意な変化は認められなかった。


⇒治療後において,MBCTの効果はマインドフルネスを上昇させ,反芻思考や心配を減少し,抑うつ症状の改善およびポジティブ感情や心理社会的機能の改善を示し,治療後‐フォローアップ間でそれらが衰退することはなかった。躁症状に対してのみMBCTの効果は認められなかった


【感 想】
気分の変動=波ととらえると,衝動の波に対処する依存症に対するマインドフルネスト少し似ている部分もあるのかな。もっと様々な治療効果研究を概観していって,bipolarに特化した治療構成要素を知りたいね。あと状態像がまだまだ勉強不足だし,そこらへんも抑えていきたいね。
HWの困難さってところは,bipolarの方々の特徴でもあるのかな。結構その点をきっちりと治療で抑えていくという印象もうけた。

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