2011年5月23日月曜日

GADは中立刺激から注意を切り替えるのが苦手?

Making someting out of nothing: neutral content modulates attention in generalized anxiety disorder.
Olatunji, B. O. Ciesielski, B. G., Armstrong, T., Zhao, M. & Zald, D. (2011).
Depression and anxiety, 28, 427-434.

【目的】
脅威刺激への注意バイアス研究で結果が一致していない要因の一つに,反応時間を指標とした課題が用いられていたことがある(情動刺激への反応時間は注意に関係なく遅延するため)。また,単語刺激を用いてたため環境的妥当性がとぼしかった可能性あり。本研究では,反応時間を指標としない課題(RSVP)かつ,写真刺激を用いて,GADの注意バイアスを検討。脅威刺激の同定の速さor脅威刺激からの注意の切り替えの速さのどちらがGADと関連するか。また,GADと注意バイアスの関係を自発的な注意制御能力が媒介するか検討。


【方法】
実験参加者:成人60名(GADの診断基準満たす群30名,健常統制群30名)
除外基準:双極性障害, 薬物依存, ADHD, 発達障害,精神遅滞,神経学的疾患あり
測定指標

①ACS:自発的な注意制御

RAPID SERIAL VISUAL PRESENTATION TASK
17枚の写真が100ms間隔でバババと呈示される。
連続呈示される写真の中にターゲット刺激があり,
①ターゲット刺激があったか(detection)
②ターゲット刺激が左右どちらに傾いてたか (accuracy)
を回答。
ターゲット刺激呈示前にディストラクター刺激が呈示され,
そのディストラクター刺激が,ターゲット刺激の検出に
影響を与えるか?

要因
群:GAD群,統制群
distractorの種類:disgust, fear, erotic, neutral
distractorとターゲットの呈示間隔:200ms or 800ms
※200ms→ディストラクターの同定の速さを反映
 800ms→ディストラクターからの注意の切り替えの速さを反映
従属変数:accuracy


【結果】
群,間隔,種類の主効果有意
→GADは全般的にaccuracyが低い
→間隔200msでaccuracyが低い
→種類によってaccuracyが異なる


群×種類の交互作用有意(F(3, 174)=2.88, p<.04, partialη2=.05)
→fearとneutral条件で,統制群はGAD群よりaccuracy高い
→neutral条件のaccuracyを統制した場合,fear条件での群間差は有意じゃなくなった。

→GAD群では,fearとneutral条件でaccurarcyに差なし。
disgust条件とeroticの条件にaccuracyの差あり (p<.07:disgustの方が正確)
 disgust, erotic, fearの各条件でaccuracyに差あり(ps<.01:fear>Disgust>eroticの順に正確)・

→統制群では,neutral条件が,他のディストラクターよりaccuracy高い。
 各条件は各々有意差あり (Neutral>fear>disgust>eroticの順で正確)


間隔×種類の交互作用有意(F(3, 174)=61.60, p<.001, partialη2=.52)
→間隔200msの場合に種類の主効果有意
→erotic条件は,他条件より有意にaccuracy低い(ps<.001)
→disgust条件は,fearやerotic条件より有意にaccuracy低い(ps<.001)
→fear条件は,neutral条件より有意にaccuracy低い

→間隔800msの場合もディストラクターの種類の主効果有意
→erotic条件は,disgutやfear条件より有意にaccuracy高い (neutralとは差なし)
→disgust条件は,neutralやfear条件より有意にaccuracy低い
→fear条件は,neutral条件より有意にaccuracy低い


群×間隔の交互作用,群×間隔×ディストラクターの種類の交互作用なし



媒介分析
①群→ACS(注意制御)→fear条件のaccuracy (sobel test:z=0.92, p=.32)
②群→ACS(注意制御)→neutral条件のaccuracy(sobeltest:z=2.21, p<.03)
(群→ACS:β=-.61, p<.01, ACS→accuracy:β=.34, p<.01, 群→accuracy:β=-.19, p=n.s.)
 →ACSが群とneutral条件のaccuracyの関係を完全媒介
 


※GADは800msと200msのいづれにおいてもaccuracyが低いので,注意制御全般に欠損がある可能性あり。
 GADは中立刺激から注意を切り替えるのが困難。中立刺激の情動価を高く評価してしまう?環境内にsafty  cueが存在してても脅威同定システムの抑制が困難?脅威刺激への注意の問題よりも,高次の注意制御の悪 さが問題?

 環境内のsafety cueの存在うんぬんに関しては,GADが罰・強化刺激の弁別苦手という研究知見に通ずるものがある。刺激の情動価評価の問題が心配の全般化につながっているのか?しかし,中立刺激への注意の切り離しが早いという知見もあり,やはり注意バイアス研究の結果は一貫しない模様。

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