2011年5月20日金曜日

不安と心配の相互作用は脅威刺激からの注意の切り離しを遅延させる

Interacting effects of worry and anxiety on attentional disengagement from treat
Verkuil, B., Brosschot, J. F., Putman, P., & Thayer, J. F. (2009).
Behaviour Research and Therapy, 47, 149-152.

【目的】
心配 (特性と状態)は脅威刺激からへの注意の固執と関連するか検討。
心配と注意固執の関連は,不安(特性と状態)と独立に生じるか相互作用で生じるか検討。
【方法】
実験参加者:大学生61名 (平均年齢=24.61, 17%が女性)

測定指標
PSWQ:特性的な心配
STAI-T:特性不安

注意課題:脅威刺激への注意の固執を測定
 注視点→注視点の左右どちらかに表情刺激→注視点→左右どちらかにドット
 参加者はドットの位置をボタン押しで反応
 表情刺激とドットが呈示位置が不一致条件と一致条件あり
 CV=不一致−一致 (反応時間)
(CVが−なほど注意を表情刺激から切り離せてる,+なほど注意が固執)

状態的心配の測定
 3つの心配事をあげて,心配してもらう。
 心配ごとについて,以下3点を評価
  ①心配事の強度,
  ②ネガティブな思考が別のネガティブな思考を引き起こした程度,
  ③同じ思考が何度も繰り返し生じた程度

  ①②③の合計得点が状態的心配の指標

状態不安の測定
 実験開始前の不安と状態的心配測定後の不安の程度をVASで測定



【結果】
特性心配 (高低)×特性不安 (高低)×表情 (怒り・喜び・中立)×呈示条件(一致・不一致)の交互作用が有意 (F(2,112)=2.81, p<.05)

怒り表情のCV,特性心配と特性不安の交互作用項と有意な正相関 (r=.23, p<.05)
特性心配と特性不安の交互作用は怒り表情のCVを有意に予測 (β=.26, p<.05)
→特性心配と特性不安の双方が高いときに怒り表情刺激への注意が固執

中性刺激のCVは特性不安を統制しても特性心配と有意 (?)な負相関 (r=-.21, p<.06)
中性刺激のCVは特性心配を統制しても特性不安と有意 (?)な正相関 (r=.24, p <.06)
→特性心配が高いと中性刺激から注意を素早く切り離す
→特性不安が高いと中性刺激からの注意の切り離しが遅くなる

状態的心配 (高・低)×表情刺激 (怒り・喜び・中性)×呈示条件 (一致・不一致)の交互作用有意

状態的心配は,状態不安を統制しても中性刺激のCVと有意な負の相関 (r=-.31, p<.05)
→状態心配が高いと中性刺激からの注意の切り離しが早い


怒り表情のCVは特性心配と特性不安の交互作用項 (β=.28, p<.05)と状態不安 (β=.26, p<.05)が有意に予測 し,状態と特性の交互作用や状態的心配は予測せず
→特性心配と特性心配の双方が高いほど怒り表情に注意が固執
→状態不安が高いほど,特性的指標に高低に関わらず怒り表情に注意が固執

中性表情のCVは状態的心配が有意に予測 (β=-.33)
→状態心配が高いほど,中立刺激からの注意の切り離しが早い

※特性不安と特性不安の双方が高いと脅威刺激から注意を切り離しにくい。心配 (特に状態的心配)は,中性刺激への注意の切り離しを早める。


感想:心配は脅威刺激を感知するためのvigilanceを高める役割があるのか。Newmanのemotional contrast理論に繋がりそうな知見? (心配は不快な情動反応の回避のために用いられるのではなく,不安を維持することで情動の変化を体験することを防ぐ,つまり急に不安が高まるのが嫌だから心配することであえて不安の高い状態を維持しておく)←この考え,結果からは飛躍しすぎなこと承知の上。

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