2011年8月29日月曜日

OCDとGADの注意コントロール


Attentional control in OCD and GAD: Specificity and associations with core
cognitive symptoms
Thomas Armstrong*, David H. Zald, Bunmi O. Olatunji
Behaviour Research and Therapy xxx (2011) 1-7

OCDの強迫観念、GADの心配を特徴とする。
両障害は共通して、反芻も持つ。

注意の制御(の不足)は、
これらの過剰な認知プロセス(強迫,心配、反芻)に共通して関連しそうだねという話。

【方法】
参加者 88名(OCD患者30名、GAD29名、非臨床群(NCC)29名)
尺度 SCID-1,GADQ-Ⅳ, Y-BOCS,
注意制御 (ACS: Derryberry & Reed, 2002)
強迫(OCI-R)、心配(PSWQ)、反芻(RRQ)
    不安(STAI-T)

【結果】
1)ANOVAの結果
OCD群, GAD群はNCC群よりも注意制御が不足。
OCD群とGAD群は有意差なし。

OCD群、GAD群、NCC群よりも強迫、心配、反芻が高い。
OCDはGADよりも強迫が高いが、心配、反芻は有意差なし(p<.10)。

2)相関
GAD群では、心配が、注意のFocus(r=-.54)、Shift(r=-.48)と関連。
OCD群では、強迫、心配、反芻ともに注意制御は有意差なし。
NCC群では、反芻が、Focus(r=-.56)と関連。

3)特性不安による媒介
STAIを統制すると、ACS-totalとPSWQの関連は消える(β=-.56⇒-.26)。
ACS→STAI(r=-.57)→PSWQ(r=.53)

【考察】
GADとOCDの関係は、心配のレベルでは区別できない。
しかし、心配と注意制御の関連によって、区別される。

不安は心配を駆り立てる。注意制御は不安の制御に有益である。
一方で、OCDは注意よりも、習慣形成の障害によるものらしい。

OCDやGADで反芻が高いのは、注意制御が原因ではない(抑うつとの併存のせい?)。


※以前、yoshitakeさんが紹介してくれた「注意制御と不安・抑うつ症状の関連

 とも繋がる話題。
 ちなみに、僕の研究でも、健常者では注意制御と心配はダイレクトな関係はないです。
 臨床群のみで相関が見られるのはすごく興味深いですが、
 僕の研究の前提を崩す結果なのかもしれない。。。

2011年8月18日木曜日

マインドフルネスと衝動性


過疎気味なので、久々にアップ。
これから頑張ります。

A Preliminary Investigation of the Relationships Between Dispositional Mindfulness and Impulsivity.
Peters, Erisman, Upton, Baer & Roemer (2011) Mindfulness (published online)

BPDや薬物依存、摂食障害などにDBT(弁証法的行動療法)が用いられているように
マインドフルネス・スキルは衝動性に関連すると思われる。

【目的】
マインドフルネスと衝動性の関連は?
ネガティブ情動や症状の影響を統制しても、両者の関連は維持されるか?

研究Ⅰ
Barratt(1993)び衝動性の概念化に基づいた(BIS-11: Patton et al, 1995)を使用。

1)行動の衝動性
2)注意の衝動性
3)計画性の無さ

加えて、マインドフルネス(MAAS, FFMQ)とネガティブ情動性(PANAS)を測定。
対象は、大学の学生、教員、スタッフを含む347名。

【結果】
FFMQ-observe以外は、BIS-totalとネガティブ相関。
PANASを統制しても、FFMQ,-nonjudge以外(describe, act aware, nonreact)は、
BIS-totalとの相関を維持。

細かく見ると、FFMQ-nonreactは、注意の衝動性や行動の衝動性と無相関。
MAASやFFMQ-act awareやFFMQ-describeは、
PANASを統制しても、BISとの相関が高いまま(r=-.39, -.44, -.37)。

【考察】
MAAS, act awareの項目は、注意の衝動性と概念的に重複するが、別概念。
内的体験が行き交うのを許容することで(non-react)、衝動的でない行動が促進(non-planning)。

内的体験のラベリング(describe)は、衝動的でない方法で反応する能力を促進(BIS-total)。

研究Ⅱ
Whiteside & Lynam(2001)の衝動性の概念化に基づいたUPPS-P(Lynam et al, 2007)を使用。

UPPSのうち、計画性(premeditation)、忍耐(perseverance)はBIS-11とかぶる。
UPPSにはさらに、刺激希求性(sensation seeking)と緊急性(negative, positive urgency)が含まれる。

【方法】
対象者 大学生227名
尺度 FFMQ, UPPS-P, DASS(うつ、不安、ストレス)

【結果】
ネガティブな緊急性は、act-aware, nonjudge, nonreactと関連。
忍耐は、describe, act aware, nonjudgeと関連。
計画性は、nonreactと関連。

これらの相関は、DASSを統制しても維持された。

【考察】
マインドフルネスに欠けると、ネガティブな情動に反応しやすく(negative urgency)、
不快なものに直面したときに、目標行動を維持できない(perseverance)。

【総合考察】
act with awarenessは衝動性と大きく関連する。
⇒進行中の活動への気付きは、ネガティブな情動やストレスが生じたときにも
行動をうまく制御するために一役買うのかもしれない。