2011年4月1日金曜日

飲酒に与える思考抑制の影響

The role of thought suppression in the relationship between mindfulness meditation and alcohol use.
Bowen, S., Witkiewitz, K., Dillworth, M. T., & Marlatt, A. G.(2007)
Addictive Behaviors, 32, 2324-2328.

【目的】
(インド発祥の瞑想の1つVipassana)マインドフルネス瞑想と治療後のアルコール使用の間の仲介要因として思考抑制(思考の回避,侵入思考)の影響の検討。

【参加者】
173名(10日間の瞑想群57名,通常の治療群(薬物依存の治療と薬物の使用に関する教育)116名,平均年齢=37.4±8.6歳,男性79%)の受刑者が参加。3ヶ月後のfollow-upの81名が分析対象。

【測定指標】
①White Bear Suppression Inventory(WBSI, Wagner & Zanakos, 1994)
思考抑制(思考の回避,侵入思考)を測定。
②Daily Drinking Questionnaire(Collins et al., 1985)
アルコール使用に関する1週間の最大の量と頻度。
③Short Inventory of Problems(SIP, Miller et al., 1995)
アルコールに関連するネガティブな結果。

【手続き】
10日間毎日8~10時間の瞑想を行った。瞑想の教示は,内的な経験に対して反応や回避をするのではなく,呼吸や身体の感覚の観察や受容をすることであった。10日間を通して,参加者はインストラクターに質問をすることを除いて,読書や会話を控えるよう指示された。詳しくは,Bowen et al.(2006)に。

【結果】
32%が刑務所に入る前に失業,10%が生活保護を受けていた。参加者のSIPは,中程度の水準(18.96±15.31)。重回帰分析の結果,侵入思考(WBSIの下位尺度)の変化は3ヶ月後の飲酒量やアルコールに関連するネガティブな結果に影響を与えなかった。しかし,思考の回避(WBSIの下位尺度)の変化に関して,瞑想の実施が思考の回避に(β=‐.29,p<.05),そして思考の回避はアルコール使用(β=.29,p<.05)や関連するネガティブな結果(β=.20,p<.05)に影響した。つまり,Vipassanaマインドフルネス瞑想により,思考を回避する傾向が少なくなり,その結果アルコール使用およびそれに伴うネガティブな結果が減少した。




2 件のコメント:

  1. Addiction研究と思考抑制の関連は最近の流行りのようですね。
    食行動の分野ではFood Thought Suppression Inventoryという尺度が開発されているので,alcoholに特化した思考抑制のアセスメントツールが今後出てくるかもしれませんね。

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  2. 貴重なコメントありがとうございます。
    流行りかもしれませんが,思考抑制をすることで衝動性が増大すると考えると,マインドフルネスやメタ認知療法といったアプローチの可能性が考えられるからではないかと思われます。
    Food Thought Suppression Inventoryは,さっそくチェックしてみます。

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