2011年3月31日木曜日

プライミング効果がギャンブルに対する期待と一致したとき

Affect-regulation expectancies among gamblers.
Shead, W. N., & Hodgins, C. D. (2009)

Journal of Gambling Studies, 25, 357-375.


研究1

【目的】

Gambling Expectancy Questionnaire(GEQ)の因子構造の再検討およびギャンブルに対する期待とアルコール使用,衝動性,重症度との関連の検討


【参加者】

513名(男性32.7%,平均年齢22.1±5.13歳,過去1年間において少なくとも月に2回のギャンブル経験)の大学生が参加。


【測定指標】

①GEQ (Stewart & Wall, 2005):relief期待とreward期待を測定。

②Problem Gambling Severity Index (PGSI) (Ferris et al., 1999):ギャンブル問題の重症度を測定。

③Alcohol Use Disorders Identificaion Test (AUDIT) (Babor et al., 2001):危険なアルコール飲酒を測定。

④Barratt Impulsiveness Scale, Version 11 (BIS) (Patton et al., 1995):衝動性を測定。

⑤ギャンブル期待を潜在的に測定 (McKee et al., 2003) :ギャンブルが気分にどのような影響を与えるのかについて書きかけの文章を自由記述。例えば,When I gamble I expect to feel.....。それぞれの 文章に対して4つまで回答できる。

【結果】

513名のうち,8.6%がproblem gamblerに,35.7%がproblem drinkerに分類。

主成分分析の結果,先行研究と同様の2因子構造。また,期待の特徴で群分けして,ギャンブルの重症度の差異を検討したところ,relief群>reward群>非期待群であり,ギャンブルが嫌な気分を解放してくれると期待する人は,ギャンブルはポジティブな結果をもたらすと期待する人よりも重症である(両群の重症度の平均値は中等度)。

飲酒,衝動性に関しても,非期待群と比較して2つの期待群は得点が高い。


研究2

【目的】

(ギャンブル期待に関する)ネガティブ,ポジティブ感情のプライミング効果がその後のギャンブル行動へ与える影響の検討。


【参加者】

513名のうち,132名(男性37.9%, 平均年齢22.6±6.04歳)が参加した。そのうち103名が最終的な分析対象。


【測定指標】

①Scrambled Sentence Task (SST) (Srull & Wyer, 1979):意味プライミング操作課題。5つの単語から4つの単語を用いて1つの文章を作る。本研究は2つのSSTがあり,1つは「ネガティブ感情の解放」をプライムするよう作られたRelief-SSTで,もう1つは「ポジティブ感情の増加」をプライムするよう作られたReward-SST。ここで用いられる感情語は,研究1の⑤で収集されたもの。

②ギャンブル行動:ギャンブルを続けるかどうか,いくら賭けるか。


【手続き】

SST終了後,コンピュータ上でのギャンブル課題(カードがhigh(9-13, +Ace) or low(2-7) かを推測するゲーム)を行う。練習後に6試行実施するが,各試行において$1-$10賭けることを選択できる。6試行の結果は,賭け金やhigh or low にかかわらず,「負,勝,勝,勝,負,負」と実は決められている。練習後に$20が手渡され,ゲームをするかお金を維持するかを選択する。もし,ゲームをする場合は最終的に残ったお金が手に入り,全部なくなっても$5は貰えることが約束される。ゲームの参加にかかわらず,最後に記憶再認課題を行う。


【結果】

参加者の78%がギャンブルすることを選択した。

ロジスティック回帰分析(バックワードステップワイズ法)の結果,AUDITの高さ(OR=1.13, 95% Cl= 1.02-1.24),PGSIの高さ(OR=1.21, 95%Cl=1.00-1.24),がギャンブル行動の決定を予測した。厳格な基準で群分けを行った際に,プライム×GEQの交互作用が見られ,Relief期待を持つ人は,特にReliefプライミングがある場合,他のプライミングと比較して,多くの金額をかける傾向がある。Reward群におけるRewardプライミングには,そのような効果はない。賭け額に関しては,Reliefプライミング時には,Relief群>Reward群>非期待群,Rewardプライミング時には,Reward群>Relief群>非期待群で,賭け額が多かったことは,期待と一致したプライミングによって,賭け額は多くなることを明らかにしている。






2011年3月30日水曜日

Risk Avoidance & Social Anxiety

The Safety Bias: Risk-Avoidance and Social Anxiety Pathology.
Lorian, C. N., & Grisham, J. R. (2010)
Behaviour Change, 27, 29–41.

【目的】
BIS(罰感受性)と社交不安の関係性をリスク回避傾向が媒介するか検討

【対象者】
55名の大学生を対象に,以下の尺度および課題を実施。

【尺度】
①Social Interaction Anxiety Scale(SIAS):社交不安症状を測定する尺度。②Behavioural Inhibition Scale(BIS):罰への感受性を測定する尺度。③Domain-Spacific Risk-Taking Scale(DOSPERT):5領域のリスキー行動傾向を測定(社会,娯楽,金銭,健康/安全,倫理)※Risk Taking Behavior Scaleの改良版。

【実験課題(リスク回避の行動的指標)】
Balloon Analog Risk Task(BART)※内容は本ブログの以前の投稿を参照

【結果】
①SIASはDOSPERTの合計得点,および社会と娯楽領域のリスキー行動,BARTの風船を膨らます回数と中程度の負の相関。②BISは,DOSPERTの合計得点および倫理領域を除く全ての領域のリスキー行動,BARTの風船を膨らます回数と弱~中程度の負の相関。③BISとSIASは中程度の正の相関(社交不安と罰感受性とリスク回避は互いに関連してた)。

④階層的重回帰分析により,BISとSIASの関係をリスク回避が媒介しているか検討。BISはSIASとBARTの風船を膨らます回数を有意に予測。SIASは,BISとBARTの風船を膨らます回数から有意に予測。BISからSIASとBARTをよ予測した時と,SIASをBARTとBISから予測した時の,BISからSIASの標準偏回帰係数がSIASをBISとBARTで予測した時により低い。したがって,BISはリスク回避を介し(部分媒介)社交不安に影響を与えていることが示された。

がんばりましょう。

よろしくお願いします。
さしむき,依存症関連の論文を投稿していきますが,幅広くやっていこうと思います。
世界政府に見つかるくらいの,知見を広げていけたらと思います。

2011年3月29日火曜日

全知の記オープン

このブログに、皆さんが読んだ論文の概略を掲載していき、たがいの研究行動を活性化していきましょう。